早朝聴いたピアノコンクール

約1ヶ月のあいだ、ベルギーで熱戦が繰り広げられていた2025年のエリザベート王妃国際コンクール・ピアノ部門

の結果が発表されました。

世界三大コンクールのひとつ(他はチャイコフスキー国際コンクールとショパン国際コンクール)で、

ピアノ部門だけでなくヴァイオリン(が有名!)や声楽部門等々あります。

今年は国際コンクールラッシュで、ほぼ同時期にアメリカでは

ヴァン・クライバーン国際コンクールが行われています。

秋にはショパンコンクールですね。




©️Alexandre Bury

このエリザベートコンクールが他に比べると、かなり特殊で過酷。

もちろん国際コンクールというのは、そもそも出場できること自体がすごいことなのですけれど。

それにしても、この過酷なコンテストを勝ち抜いて行くのは並大抵ではない・・・

並大抵どころか人間業ではないなと思ってしまうほどの過酷さです。

どれほど大変かと言ったら

★第1次予選は、課題曲から約25分のプログラムを組みます。

しかしながら、全てを演奏するわけではなく、演奏の1時間前に審査員から指定されたものを演奏します。

  (ヒエーっ)

・ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン(作品31まで)のソナタから第1楽章

・自由曲

・4つのエチュード(ショパン、リスト、リゲティ、あるいは他の作曲家による1曲)

〜この時点で出場者は60名でした。

★セミファイナルは2ステージ、新曲を含む約40分のリサイタルと、約30分のモーツァルトの協奏曲。

リサイタルの方は、演奏の29時間前に申告しておいた2種類のプログラムのうち、どちらかを指定されるのだそう(泣)

〜この時点で、24名から半分の12名にしぼられました。

★ここからのファイナルが独特です。

最終本選まで、1週間あまり空きます。ここまでが過酷だったので

(何回だって”過酷”と書きますよ。だって本当に過酷なんだもん)

たっぷりと休養をとって、英気を養い、万全な状態で本選に臨むよー!

じゃ、ないのです。

ファイナリストは外界と隔離されて幽閉されます笑

実際には、エリザベート王妃音楽礼拝堂というチャペル(まるでお城)に移り

ここで未発表の新曲(オーケストラ付きのもの)を渡されるので、練習して研究して練習して研究して

オケ合わせがあって研究して練習して・・・という一週間を過ごすのです。

疲労困憊の状態で迎えるファイナルステージなんだなあ・・・・・。

 '87年だったか若林顕さん2位、仲道郁代さんが5位だった時のことをよく覚えています。

もちろん現在のように情報は早くないので、ニュースで入賞の一報を知ったのですが

その後雑誌の音楽之友で過酷な!コンクールの過程を信じられない思いで読みました。

〜今回のファイナリストには4人の日本人と、当日のオーケストラとともに寄り添ってくれる指揮者が、

なんと日本人の大野和士さんでした!心強いマエストロ。

大野さんといったらオペラ指揮者というイメージなので、気持ちよく歌わせてもらえる。

日本では日付が変わり6月に入った日曜の早朝。

ファイナル最終日、日本時間の3:15から、二人の日本人ピアニストの演奏を生配信で聴きました。

全く個性の違う、どちらも素晴らしいピアニスト。

それぞれが選んだピアノ協奏曲は、自らの個性を存分に発揮できる選曲だったように思います。

あ〜、生で聴きたかったなあ。

そして指揮が素晴らしすぎるじゃないか。

最終結果は、優勝がニコラ・メーウーセン(オランダ)

第2位に久末航さん、第5位に亀井聖矢さんでした。

入賞の二人の日本人、吉見友貴さんと桑原志織さんも素晴らしかった。

桑原さんのブラームスは、重厚で壮大でした。

日本の女性がここまでの重い曲を、こんな分厚さで聴かせてくれるなんて、と感激でした。

ここまで登っていくために、どれほどの時間を、情熱をかけてきたことでしょうか。

これから入賞者たちのコンサートが始まります。

多くのコンテスタントたちが、コンクールを転戦していることと思います。

才能豊かな若いピアニストたち(多くが既に2000年代うまれ!)の未来が明るいものでありますように、と

願わずにはいられない日曜日の朝でした。

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