No.3「松﨑 禅さんのこと」

2025年3月の終わり頃

とてもユニークなお問い合わせがありました。

要約すると「ピアノを貸してください」

パリ・コンセルヴァトワールの学生さんという方が

日本に一時帰国する間、1週間ほど練習できるピアノを探しています、という内容でした。

はて、どうしたものか・・・と少し考え、春先で体調を崩していたのでお返事が遅くなってしまったのですが、我が家の古いYAMAHAでよければどうぞお使いください、と返信しました。

それから夏までに、10回ほどメールでやりとりしたでしょうか。1日何時間まで弾いていいか、何時までならOKか、などなど。

マスタークラスをしてくださるとまでお申し出くださり、ありがたくお願いして、気づけばあっという間に7月になっていました。

ドキドキワクワクの1週間が始まりました。

自転車に乗って現れた禅さんは、本当にお人柄のよい好青年で、とてもフランクにお話される素敵なピアニストです。

実は、自分がピアノを弾けないとか、レッスンができない1週間になるので、私はパソコンと睨めっこの、事務仕事週間にしようと決めていました。

ところがです。

実際に禅さんが扉の向こうで練習を始めたら、私の方は全く仕事がはかどらず、気づくと手が止まっていて練習の音に入り込んでしまっていました。

ああ、今はこんなことを研究しているな、分析中だな、パーツを磨いているな、この音色を練っているな・・・。

長い時間、ほんのわずかな休憩をはさみながら練習は続きました。

歌う・歌う・歌う練習。歌っている歌声が絶えません。

本当に得難い1週間でした。日曜には禅さんのピアノが聴こえなくなったことが寂しく感じられました。

金曜日にマスタークラスをお願いし、翌日がピアノをお貸しする最終日でした。練習のお邪魔になるかも、と遠慮しつつ

よければお茶を、とお声がけして少しお話させていただきました。

お話してみると、共通の話題もたくさんあって楽しく、驚くこともありました。

今はパリとジュネーブを行き来しながらの学生生活を送りながら

ジュネーブでは小さい子どもへの出張レッスンをしているそうです。

練習をずっと聴いていて印象的だったのは

ずっと歌声が聴こえていたことでした、と申し上げると

「歌なので歌わないと」とのお答え。本当にその通りだと思います。

しかも、低めのバリトンですごくいい声。

また、音楽家専門の整体師(アルゲリッチとか!)に体を診てもらった話も

おもしろく聞きました。やはり体が大事なのですね。

夢のような1週間、私のピアノは気持ちよく歌い続けて状態が変わりました。

このままでいて欲しいです。

さて、25日に来られなかった方に

松﨑 禅さんの演奏はこちらから聴けます。

リゲティ; エチュード No.3

https://youtu.be/G7PP5nlRGgQ?si=SvZEEn8KF2WXxuoF

ベートーヴェン; ソナタ2番

(ラジオ番組で、禅さんの演奏は50:00辺りから)

https://www.rts.ch/audio-podcast/2024/audio/finale-du-concours-d-interpretation-musicale-de-lausanne-a-la-salle-paderewski-28569388.html

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